血糖値への驚きと期待
現在のように、なんでも食べることのできる状況では、自分の好みで自由に食べ物が選択できます。
このことは、皮肉にも、偏食が可能な食環境を自分たちでつくったことにもなります。
そういった偏食を解決するには、栄養に関する情報を、自分で正確に判断することが必要です。
まちがった情報により、肉類をいっさい食べなかったり、特定の健康食品ばかりを食べていると、健康を意識するあまりに偏食となり、不健康な食べ方になってしまうのです。
脂肪をとればかならず太るとはいえない脂っこいものを好んで食べていると、脂肪が高カロリーであるために、エネルギーのとりすぎになり、体脂肪がどんどん増えます。
その結果、血液中の中性脂肪が増え、脂肪組織や肝臓での脂肪の蓄積量が増えてきます。
脂肪のとりすぎは、動脈硬化の誘因となる肥満、高脂血症、糖尿病、高血圧の発症にも関与してきます。
また、動脈硬化の発症する部位は、誘因によって異なることもわかってきています。
たとえば、脳動脈硬化は高血圧、糖尿病、ストレスなどの影響は大きいのですが、高脂血症、たばこの影響は比較的少ないのです。
一方、心臓の冠状動脈硬化では、高血圧、高脂血症、たばこ、糖尿病などの影響が大きく、末梢動脈硬化では高血圧、たばこ、高脂血症、さらに腎動脈硬化では高血圧、高尿酸血症などの影響が大きくなります。
自分には、どのような危険因子が存在しているのかを知れば、将来、どこに動脈硬化が出現しやすいかを予測することができます。
ところで、同じ脂肪でもそれを構成している脂肪酸により、異なった特徴があらわれてきます。
動物性食品に多い飽和脂肪酸は、血中コレステロールを上昇させるのに対して、植物油に多い不飽和脂肪酸はコレステロールの低下作用があります。
また、植物油に多いリノレン酸や魚油に多いイコサペンタエン酸(IP)とドコサヘキサエン酸(DH)は3系脂肪酸とよばれます。
これらはプロスタグランジンやトロンボキサンなどの、エイコサノイドとよばれる物質の代謝を介して、血小板の凝集を抑制する効果により、血栓の予防に役立ちます。
また、炎症を抑制することから、各種炎症性の疾患に有効であることもわかってきています。
以上のように、脂肪にはさまざまな種類と効果があるのです。
では、どの脂肪をどのくらいの量とればよいのでしょうか。
具体的には、肉類の脂身を制限し、調理油は植物性の油を大さじI〜二杯として、魚類は青身の魚である大衆魚をできるだけ選択することになります。
食塩をとりすぎる習慣は、高血圧や胃ガンの誘因となります。
食塩の過剰摂取が、血圧の上昇につながる理由は、まだ完全に解明されたわけではありませんが、次のように考えられています。
一般的な高血圧には、食塩の摂取で血圧が上昇する食塩感受性高血圧と、上昇しない食塩非感受性高血圧のタイプがあります。
食塩に感受性のあるタイプでは、腎臓におけるナトリウムの排泄機能が、なんらかの原因で低下しています。
ナトリウムの排泄能が低下しているなかで、高濃度の食塩を摂取しつづけると、血液中のナトリウム濃度が上昇します。
そうすると、血管の平滑筋細胞内ナトリウム濃度が上昇し、それが細胞内のカルシウムイオンの増加を引きおこします。
その結果、平滑筋が収縮して、血圧が上昇すると考えられています。
高血圧は、軽度の場合は休養をとることで容易におさまることが多いのですが、適切な治療をしないまま放置しておくと、心臓病や脳卒中の誘因となり、さらに腎臓病や眼底出血を引きおこすこともあります。
また、高血圧のような生活習慣病の場合、発症しかかっている前段階の早い時期から、生活習慣を改善することが有効であることがわかってきました。
それに加え、たとえ薬物療法が行われた場合でも、生活習慣の改善により、薬物の効果を上げることもわかってきたのです。
高血圧を治療する場合、まず考えられるのは減塩です。
安静が保たれる入院の場合、一日の食塩摂取量を七グラムまでとする減塩を一週間つづけると、血圧がI〇パーセント以上低下する人の割合は約二〇パーセント、一日に三グラムまでとかなり厳しい制限をすると、約四〇パーセントの人に血圧の低下がみられると考えられています。
現在、健康な人でも、食塩の摂取量は一日にI〇グラム以下とし、すでに高血圧や動脈硬化がある場合は七グラム以下をめやすにします。
漬物、塩蔵類、汁物、加工品など、ナトリウム含有量の多いものを控えい調味料では、食塩、みそ、しょうゆをできるだけ控えた、おいしい減塩食をつくることがコツとなります。
女性のほうが長生きなのは、食事も関係しているのですか。
男性にくらべて女性のほうが長生きであることは、ここ数年、厚生省による日本人の平均寿命の調査でもあきらかです。
この男女の寿命差については、遺伝的に女性のほうが長生きできるようにしくまれているのではないか、生物学的に女性のほうが強いのではないか、男性のほうがストレスの強い環境下にあるのではないかなど、さまざまな説がありますが、私は男女の食生活のちがいも寿命に大きな影響を与えているのではないかと考えています。
というのも、幸いにして私は家庭や職場などに女性が多いので、彼女たちの食習慣をつぶさに観察することができたからです。
それによって、女性は男性にくらべて、食事に対して広い知識や技術をもち、食習慣もはるかにすぐれているということがわかったのです。
たとえば、女性は母親になると子どもの健康を考えて、ごはん、肉、魚、野菜と、食卓にいろいろな料理を並べます。
子どもの手前、母親が好き嫌いをいうことはできないので、自分もなんでも食べます。
その結果、自然に栄養バランスのとれた食生活を送るようになります。
一方、父親が家族と食卓を囲むのは、せいぜいが週末程度。
平日は外食中心で、その日の気分に合わせて食べたいものを食べています。
当然、食事の内容は偏りがちです。
また、女性は常にダイエットを意識しているので、こまめに体重計にのり、食事の量をセーブしています。
しかし男性は太ると健康に悪いと思いつつ、それを予防しようという行動にはなかなか移りません。
さらに男性は酒を飲むことで、女性は趣味やショッピングにいそしむことで、ストレスを解消するというのはよくいわれていることです。
どちらが健康によいかは、いうまでもないでしょう。
以上の点だけをみても、女性の食習慣のほうがすぐれていることは、おわかりいただけると思います。
男性も女性並みに長生きしたいと思うなら、女性の食習慣をよく観察して、見習うことをおすすめします。
食事のせいで病気になるということはありますか。
かつて生命に危険を及ぼす病気として、日本人にもっとも恐れられていたのは結核でした。
しかし現在では、日本人の死因の約六〇パーセントは、ガン、心臓病、脳卒中の三大疾病で占められています。
また高度経済成長期以来、糖尿病が急激に増加しており、いまや成人の1〇人に一人が糖尿病にかかっているといわれ、まさに国民病ともいえる状況になっています。
これらの病気が増えた背景には、社会の高齢化もありますが、食生活の欧米化による高エネルギー・高脂肪の食事、車社会による運動不足、ストレスの増加など、日本人のライフスタイルの変化が深く関与しています。
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